リワークプログラムの通所はうつ病再発のための様々なセルフケアの方法を学ぶことができます。
その効果は認められていて、多くの人が実際に救われていると思います。
一方で残された課題もあるように思います。
リワークプログラムの課題
つまり、再休職した、考えられます。

一方、リワークプログラムを利用せずに復職した場合、2~3年で就業率は60%も低下するのでリワークプログラムの効果はかなり大きいと思います。
1000日間就業が継続した場合、その後も安定して就業が継続します。
つまり、復職後1000日間のセルフケアの重要性が示唆されています。

(*出典:復職後の就労継続性に関する効果研究 ~Multicenter Retrospective Study(多施設共同後方視的研究)~ 平成24年度厚生科学研究)
さて、リワークプログラムの課題は2~3年後の就業率の低下を15%以下にする手立てはないか、つまり、よりリワークプログラムの効果を高めるにはどうすればよいか?という課題です。
残された課題についての考察
全員が全てのプログラムを修了するわけではない
リワークプログラムは概ね3~6か月の通所が効果的とされています。
復職後のセルフケアを学ぶために十分な期間の確保できるからです。
しかし、わたしの通所先では1か月程度の通所、あるいは週2回しか通所できない人もいました。

つまり、全てのプログラムを修了せず、退所する人がいるのです。
わたしの通所中、約10名の方と同席しましたが、2~3名の人は「中途退所」していったので、ちょうど前述の通り「復職しても2~3年ほどで就業率は約15%低下」という実態と不思議に符合します。
中途退所の理由
①職場の要請
所属している会社の都合でリワークプログラム通所を切り上げざるを得ない人がいました。
わたしと同年代です。
この人の勤めている会社の社長はこの会社の産業医と同級生で昔から懇意にしているそうでう。
会社と産業医が多重関係にあることは好ましくありません。
産業医の中立性が担保できないからです。
穿った見方をすると通所者の復職の時期を歪めた可能性があります。

②休職期間と解雇時期の切迫
2年程度休職して通所している人は、就業規則で2年程度休職が続く場合は特定の期日をもって解雇されます。
わたしも休職開始時期にそのような書類に判を押さざるを得ませんでした(幸い有給休暇、バックアップ休暇を全て使い果たした結果、書類上の休職期間は8か月ですみました)。
つまり、十分なセルフケアの時間がなく止む無く復職するしかなかったという人もいました。
③距離的に通所が難しい
20代前半で2年近く休職していた人は、車で1時間半かけて通所していました。
自宅と職業センターの距離があるため、週2日しか通所していませんでした。
結局、この人は2か月ほどの不十分な通所で復職せざるを得ませんでした。
大都市圏は公共交通機関も整備されているし、公的通所先も各所にあります。
しかし、わたしの住んでいる地方にある県では公的通所先は1か所だけです。
メンタル疾患の治療、復職訓練では都市部と地方で格差があることを痛感しました。
④「一人暮らし」の問題
ある30代の男性は千葉の職場でうつ病を発症しました。
しかし、一人暮らしでは身近な支援者がいないので通所や治療は困難です。
そこで、実家のある地方に戻ってリワークプログラムに通所を開始しました。
ところが、上述の例と同じく通所は車で1時間以上かかります。
結局、千葉のリワーク施設の方が通いやすいということがわかり、通所1か月で千葉に戻ることになりました。
治療と通所の支援のため、実家の母親と千葉で同居することにしたそうです。
リワークプログラムを提供する施設の現状
公的な施設は通所の条件を満たせば、無料でプログラムに通えます。
そのため、通所希望者は増える一方で、入所は順番待ちの状態です。
スタッフもてんてこ舞いで円滑なプログラムの提供が危ぶまれます。
心療内科や精神科がリワークプログラムを保険適応で実施しているところもありますが、地方ではそうした有料施設の数も少ないのが実情です。
通所者が「ここは合わない・・・」と思っても地方では選択肢が極めて限られます。
支援とはどうあるべきか?
うつ病は「こころの風邪」ではなく「こころの癌」です。
「治癒」はなく「寛解」があるだけです。
つまり再発防止が生涯のテーマになります。
脳の力、生きる力の回復には十分な休養と復職訓練の期間とその「質」が担保されなくてはならないと思います。
わたしは復職後、うつ状態は回復期~維持期の辺りのようで、こころの状態がいい日もあれば悪い日もあり、この波が繰り返しています。
それでも波の幅は少しずつ小さくなっている感はあります。
復職後のフォローアップは極めて重要です。

しかし、人事部も産業医も上長も十分にわたしに寄り添ってくれているかいささか疑問があります。
無理もありません、みんな「わたしのためにだけに」存在しているわけではないからです。
この隙間を埋めるのがリワークプログラムや自己学習で学んだセルフケアです。
うつ病の再発防止の主人公はやはり他の疾患同様、患者本人です。
そのため、職場の理解、医療、官民の支援体制の一層の充実が急務だと思います。
コメント